「ゴム製の槌」ー望みの結果を出すためにどんな決断を下すか

Female hand holding hammer on yellow background, panoramic mock-up

「ゴールデン・サークル」の概念で有名な『WHYからはじめよ』(著者:サイモン・シネック/発行:日本経済新聞出版社)の冒頭で、「ゴム製の槌」を象徴とした逸話が紹介されています。

アメリカの自動車メーカーの幹部が日本の自動車工場を見学した際に、流れ作業の中にとあるプロセスがなくて混乱する、という話なのですが、そのプロセスというのが「車体に取り付けたドアがピッタリ嵌まるようにゴム製の槌でドアの縁を叩く」というものー。つまり、日本の工場では、しっかりとした設計を行なっているからそんなプロセスがない、だからそのための道具=ゴム製の槌も、それを使う従業員も、ドアの嵌り具合を蓄積したデータも必要ない=余計なコストがかからない、というわけです。

著者はここから「望みの結果を出すためにどんな決断を下すかがその後のプロセスを変える」と説き、「どちらの作業の道筋も短期的に見れば同じような結果を生むのかもしれない。だが長期的な成功を予測できるのは、設計の段階からドアが隙間なくあうようにしておく必要性を理解している人間、つまり怠慢があってはならないことを理解している人間だけだ。」(上述書P .18-19)と結んでいます。

日本企業がアメリカ企業に比べ計画的かどうかはともかく、環境の変化が早く大きい今ー特に新型コロナウィルスが経済へ与えた影響は2年前には想像がつかなかったことであり、こうした中にいるとーどうしても「今をどう乗り切るか」ということに考えが偏りがちになるかもしれません。

もちろん顧客の需要に応え(自身も含め)従業員の雇用を支える経営者にとって「今を乗り切る」ことが重要であるのは間違いないのですが、「今を乗り切る」ことの繰り返しは最善ではないと、上の逸話は示唆してくれます。

昨年、パートナーコンサルタントとして3件の事業再構築補助金申請をご支援させて頂き、幸いなことに全て採択されましたが、まさにこの申請作業は「望みの結果を出すためにどんな決断を下すか」だと感じます。

「とにかく補助金を獲得する」「今を乗り切る」ためだけの作業なのか、「長期的な成功のための」事業設計なのかー。

「どちらの作業の道筋も短期的に見れば同じような結果を生むのかも」しれません。ですが「長期的な成功を予測できる」ような設計をすることが、このような状況だからこそ必要だと考えます。